筋トレにおいて食事は重要な役割を担っています。辛い筋トレをしても、食事によってしっかり栄養補給しなければその効果も減少してしまいます。この記事では、そんな筋トレと食事について取り上げます。筋トレにおいてなぜ食事が大切なのか、また、筋トレをする人が摂取するべき栄養素について解説します。筋トレをする方向けの具体的な食事メニューや、NGな食事、その他よくある疑問についても紹介しているので、食事について悩んでいる方はご参考にしていただけましたら幸いです。
筋トレと食事の関係性
筋トレの目的に関わらず、トレーニングをする上で食事は大切です。筋合成を行うには食事による栄養補給が必要不可欠です。特にたんぱく質は体内に吸収されるとアミノ酸に分解され、傷ついた筋線維を修復する材料になります。また糖質等の炭水化物は筋肉を合成する際のガソリンのような役割を持ちます。そのため、ダイエット等で炭水化物の摂取を控えると、筋肉が付かず、基礎代謝が上がらないという結果につながるかもしれません。
またそもそも身体を動かすエネルギーである糖質が足りていないと、筋肉中のアミノ酸がエネルギーとして消費される可能性があります。そのため、ダイエットや増量の有無に関わらずどの時期でも、バランスの良い食事を取ることが健康、ひいては目標の達成において重要です。
筋肉に必要な栄養素とは
筋トレを行い損傷した筋肉は、24~72時間かけて修復され、新たな筋線維が作られたり、元の筋線維を太くしたりします。ここではそんな筋肉の合成に必要な栄養素について解説します。それぞれの栄養素の役割について理解し、栄養補給の際は意識してみましょう。
たんぱく質
筋トレ前後に最も摂取するべき栄養素がたんぱく質です。たんぱく質は傷ついた筋肉を修復する際の材料になります。たんぱく質は身体を構成するだけでなく、神経伝達物質やビタミン等の前駆体(物質が生成される前の段階の物質)にもなります。また、たんぱく質はその由来から動物性と植物性の2種類に分けることができます。動物性であれば鶏のささみや鮭、植物性であれば大豆等から摂取しましょう。
たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されており、そのうち11種類は体内で生成することができますが、他の9種類は生成することができず、「必須アミノ酸(EAA:Essential Amino Acids)」と呼ばれます。EAAは食事によって摂取しなければなりません。鶏肉や豚肉、チーズ、牛乳、煮干しなどに多く含まれるので、意識的に摂取しましょう。
(出典:厚生労働省)
炭水化物
炭水化物もたんぱく質と同様に、筋肉を作る上で大切な栄養素です。炭水化物は糖類と食物繊維の総称です。糖類は主にエネルギー源としての機能を担っています。そのため糖類をしっかり摂取することは、筋トレ中にエネルギー切れを起こさないことにつながります。さらに、糖類は筋肉を収縮・弛緩する際のエネルギーにも必要だといわれています。
食物繊維には、脂質や糖質・ナトリウムなどを体外で排出する機能があり、これらの過剰摂取による生活習慣病の予防・改善を促す栄養素です。
(出典:厚生労働省)
ビタミン
ビタミンは人体の機能を正常に保つ栄養素です。血液に溶け余分な量が尿から排出される水溶性ビタミンと、水に溶けず肝臓や脂肪組織に蓄積される脂溶性ビタミンがあります。水溶性ビタミンにはビタミンB群、ビタミンCが含まれます。それぞれ役割が異なりますが、例えばビタミンB1は筋肉を動かすエネルギーを産生するTCA回路に深く関わっており、筋トレをする上で摂取するべきビタミンです。脂溶性ビタミンにはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあります。これらも日頃から摂取するべきビタミンです。
ビタミンは体内でほぼ生成することができないので食事から摂る必要があります。それぞれ含まれる食品は異なりますが、例えばレバーやほうれん草、まぐろなどにはビタミンB1を含むいくつかのビタミンが含まれています。
(出典:e-ヘルスネット)
脂質
脂質は運動エネルギーの産生に必要な栄養素です。その性質から「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられますが、エネルギー産生に関わるのは不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸は主に植物性の油に含まれるので、オリーブオイルやココナッツオイルから摂取することができます。また、脂質には脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあります。
炭水化物やたんぱく質の2倍以上のエネルギーを産生するため、人間の身体は脂質を優先して吸収すると考えられています。しかし過剰摂取は脂肪を増やすことにつながるので注意が必要です。
(出典:厚生労働省)
ミネラル
ミネラルが不足すると、さまざまな欠乏症につながり、不調を招きます。ミネラルは「生体を構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称」とされていて、カルシウムやマグネシウム、リン、カリウムなどが含まれます。これらは互いに影響しあうため、バランスよく摂取することが大切です。ただ、過剰摂取も過剰症などにつながるので注意が必要です。
ミネラルは魚介類や藻類、青菜などに多く含まれます。
(出典:e-ヘルスネット)
筋トレに良い食事メニューを紹介!
ここまで筋肉や人体に関わる重要な栄養素について紹介しました。ここからは筋トレをしている方向けに、各栄養素を効果的に摂取できるメニューを紹介します。簡単に作れるメニューなのでぜひ実践してみてください。
鮭のホイル焼き(きのこ和え)
鮭には必須アミノ酸がバランスよく含まれ、良質な動物性たんぱく質だといわれています。筋肉の合成を促す作用があるビタミンDなども含まれ、筋トレをする人にとって摂取するべき食材の1つです。
鮭にはさまざまな調理法がありますが、ここではあまり油を使わないヘルシーなホイル焼きを紹介します。必要な食材は以下の通りです。
- 鮭の切り身
- きのこ類(えのき茸、しめじ等)
- きざみねぎ
- 植物油少々(サラダ油やオリーブオイル)
- バター
- 塩・胡椒
あとはアルミホイルがあれば準備完了です。
1.まず、アルミホイル(30cmほど)を出し、その上に油を少々引きます。
2.そこに鮭の切り身、きのこを乗せ、その上にバターを乗せ、塩・胡椒を少々かけます。
3.左右から食材にホイルを被せ、両端をくるむようにして食材を包み込みます。
4.包んだ状態のものをフライパンに乗せ蓋をして、中火で4分ほど加熱し、その後弱火で7~8分ほど加熱します。
5.時間が経ったらきざみねぎなどを盛り付け、完成です。
えのきなどのきのこにはマグネシウムが豊富に含まれています。マグネシウムは、不足すると筋トレ中のけいれんや吐き気が起こる可能性があるので、日頃から摂取しておきたい栄養素です。
また、みじん切りにしたニンジンや、玉ねぎを一緒にホイル焼きにするのもおすすめです。他の野菜も一緒に摂ることでバランスよく栄養を摂取することができます。
鶏肉と野菜のスープ
簡単で手軽に作れる鶏むね肉と野菜のスープを紹介します。たんぱく質、ビタミン、ミネラルがバランスよく摂れるメニューです。必要な食材は以下の通りです。
- 水
- 鶏むね肉
- にんじん
- ブロッコリー
- コンソメ
- 塩
鍋に水を入れ、準備完了です。
1.鶏むね肉を一口大に切ります。
2.切った鶏むね肉を鍋で灰汁を取りながら煮込み、色が変わったら切った野菜を入れます。
3.コンソメ・塩を入れ味を調節し、全体に火が通ったら完成です。
ブロッコリーにはビタミンB6、ビタミンC、カリウムなどが豊富に含まれ、筋トレに良い食材だといわれています。また、お好みできのこや玉ねぎなど、他の野菜を入れるのもおすすめです。
オートミール×ヨーグルト
さらに手軽な、オートミールを使ったメニューを紹介します。オートミールとは麦の一種で、食物繊維が豊富な食材です。またたんぱく質やマグネシウム、鉄分、カルシウムなどのミネラルも豊富に含まれています。必要な食材は以下の通りです。
- オートミール
- ヨーグルト
- バナナ
- ブルーベリー
- その他のフルーツ(チアシードなど)
お好みで好きなフルーツを入れてください。
1.オートミールにヨーグルトをかけ、レンジで30秒ほど温める。
2.切ったフルーツを盛り付け完成です。
温めすぎるとヨーグルトの乳酸菌が死んでしまうので注意しましょう。手軽に豊富な栄養素を摂取できる、朝ごはんにおすすめのメニューです。もちろん食後のデザートとして食べるのもおすすめです。
筋トレに良いコンビニフードを紹介
筋トレに良い栄養バランスの食事を作りたくても、中々時間がなく料理できない方もいるでしょう。そんな方向けに筋トレに良いコンビニフードを紹介します。
- サラダチキン
- ゆで卵
- チーズ
- 納豆
- カニカマ
- 鮭の切り身
- ちくわ
- 豆腐
これらのたんぱく質が豊富に含まれ脂質が少ない商品がおすすめです。ただ先に紹介した栄養素をバランスよく摂取することが重要なので、通常の食事であればこれらだけでなくしっかり主食や副菜も摂るようにしましょう。
筋トレに良い食事のタイミングとは
ここでは、筋トレの効果を向上させるためにいつどんな食事を摂るのが良いのか、筋トレ前後の食事のメリット・デメリットについて解説します。
筋トレ前の食事
筋トレ前の食事では、主に糖質を補給することをおすすめします。筋トレ中は多くのエネルギーを消費するのでエネルギー切れを起こさないための食事を摂りましょう。空腹で筋トレを行うと筋肉が分解されエネルギーにされてしまうので注意が必要です。
ただ、筋トレの直前だと消化のためにエネルギーが使われたり、トレーニング中に気持ち悪くなったりしてしまいます。また食事を摂ることで消化器官に血液が集中し副交感神経が優位になり、リラックスしてしまいます。
筋トレ前の食事はだいたい2~3時間前がおすすめです。もし1~2時間前に空腹なら、おにぎりやうどんなどの軽食を摂りましょう。また、もし筋トレ30分前に食事を摂るのであれば、消化の良いバナナや野菜ジュースを摂るようにしましょう。
筋トレ後の食事
筋トレ後30~1時間半くらいまでは筋肉のゴールデンタイムといわれています。たんぱく質、脂質、炭水化物の3大栄養素に加え、ビタミンやミネラルも摂るようにしましょう。プロテインやサプリメントを活用するとより効率よく摂ることができます。また、ミネラルは忘れられがちですが、筋トレ中は発汗により多くのミネラルが失われるので注意しましょう。
筋トレ後に食事を摂ることのデメリットは特にありませんが、「筋トレをしているから」という理由で食べすぎてしまうことがあるので注意が必要です。消化に悪いので早食いにも気を付けましょう。
筋トレに良い食事回数とは
筋トレをする人は食事回数を増やすのがおすすめです。たんぱく質の吸収は、一度の摂取量が多すぎると効果的に吸収することができないという説があります。食事回数は朝・昼・晩の3回の食事を基本としている方が多いでしょう。しかし、例えば増量期に1日に必要な摂取量を3回で摂ろうとすると、1回の摂取量が吸収しきれない量になる可能性があります。そのため、6回に分けるなどの工夫をしましょう。
ただ、1度のたんぱく質摂取量と吸収効率について、1度にどれだけのたんぱく質を摂っても吸収率は変わらないとする研究もあります。そのため、実際はたんぱく質を1度にどれだけとっても効果的に吸収されている可能性があります。また、人体は消化にもエネルギーを使うので食事回数が多いと疲れるかもしれません。さらに食事を摂ると副交感神経が優位になることなどから、仕事やトレーニングのパフォーマンスに影響が出る可能性もあります。
しかし、食事回数を増やすことには他にもメリットがあります。筋トレで重要なのが、空腹の時間を作らないということです。人間の身体は空腹状態になると、筋肉を消費することで必要なエネルギーを取り出そうとします。筋肉の分解を促すホルモンを生成させないために、できるだけエネルギー切れを起こさないように保つことが大切です。その点から、食事回数を増やすことは筋肉を維持する上で効果的であると考えられます。
食事回数を増やすことのメリット・デメリットを意識し、実際に試してみてご自身の最適な食事回数を見つけましょう。
筋トレをする上でNGな食事
ここまで筋トレと食事の関係や、筋肉に良い食事のポイントについて紹介しました。ここでは筋トレをする上でNGな食事について紹介します。下記の食事には注意しましょう。
脂質が多い食事
脂質は1gあたり9kcalと、3大栄養素の中で最もエネルギー量が多い栄養素です。(たんぱく質と炭水化物はそれぞれ1gあたり4kcal)内臓の保護や体温の維持、ビタミンの吸収を助け身体の抵抗力を維持すること等のために必要です。しかし、摂りすぎると体重増加や生活習慣病のリスクを高めてしまいます。
脂質が多く含まれる食事は美味しいと感じやすく、ついつい多く摂りすぎてしまいます。また外食に行くとすぐに必要量の脂質が摂取できてしまうので、注意が必要です。スーパーやコンビニで買ったものやデリバリーしたものを家で食べる中食も同様です。これらには食品添加物も多く含まれており、肝臓に負担がかかることで筋肉の修復や疲労回復にエネルギーや栄養が生き届かなくなる可能性もあります。
脂質はジャンクフードや天ぷら、ラーメン、惣菜パンなどに多く含まれるので、できるだけそういったものは食べないようにしましょう。もし脂質が多いものを食べたいと感じるのであれば、脂質が足りていない合図かもしれません。その際はアボカドやナッツ類、青魚を食べたり、オリーブオイルを使った料理で必要な脂質を摂取しましょう。
(出典:株式会社大塚製薬工場)
アルコールの摂りすぎ
アルコールには筋肉の増量を抑制する作用や体脂肪が付きやすくなるといった作用があります。特に筋トレ後の飲酒は脱水症状を引き起こしやすく、コルチゾールという筋肉を分解するホルモンの分泌を促してしまう恐れもあるので、避けましょう。
もちろん普段から絶対に飲んではいけないわけではありませんが、筋肉にとってはデメリットが多く、できるだけ控えるのがおすすめです。もし飲みたい場合は食事の内容を見直したり、数日ごとなどの感覚を空けて飲んだりしましょう。
(出典:九州大学|健常者におけるコルチゾール上昇と筋力・筋肉量の因果関係を解明)
食事はプロテインで代用してもいい?
食事をプロテインだけで代用するのはおすすめしません。筋トレで筋肉を作ることにおいて、バランス良く栄養素を摂取することが大切だと解説しました。プロテインはあくまで栄養補助食品であり、それだけで十分な種類の栄養素を摂取することができません。
1回の食事がプロテインによるたんぱく質のみの摂取だと、エネルギー切れを起こし、筋肉を減らすきっかけを作ってしまう可能性もあります。炭水化物、ビタミン、脂質、ミネラル等もバランスよく摂取しましょう。
筋トレにおける食事制限について
筋力強化や筋肥大のみを目的とする場合、特別な食事制限をする必要はありません。しかし、筋トレの目的にダイエットが含まれる場合は、摂取カロリーが消費カロリーを上回らない範囲に収まるように食事制限をしなければなりません。そのためには自分の1日の基礎代謝量や総代謝量を知り、それを上回らないように、栄養バランスを担保しつつ食事をする必要があります。基礎代謝は身長・体重からおおよそ導くことができますが、もし管理が難しいと感じる場合は栄養士やトレーナーに相談してみましょう。
まとめ
この記事では、筋トレと食事というテーマで栄養素や具体的な食事メニューについて詳しく解説しました。食事は筋トレにおいて大切であり、筋トレの目的が何であれ、意識しなければなりません。しかし、ハードな食事制限は逆にストレスとなり、逆効果になることもあるでしょう。今回紹介した食事メニューなどを実践したり、トレーナーに助言を求めたりして、美味しい食事を楽しみながら理想の身体を目指しましょう。
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